CEREC3によるオールセラミックスCAD/CAM修復

CERECとは? 詳しい説明 手順1;光学印象法  手順2;間接法  相関法  その他の応用  利点欠点

CERECの詳しい説明

CERECシステム
 近年のコンピュータ技術・歯科材料の飛躍的な進歩により、歯科用CAD/CAM機器を使用したオールセラミック修復が本格化してきています。 CAD/CAM(Computer Aided Design/Computer Aided Manufacturing)とは、コンピュータ支援設計・製作という意味であり、開発から30年が経過した現在、多くの歯科用CAD/CAMシステムが臨床応用されています。
 中でもCERECシステムは、即日修復(one day treatment)をコンセプトに、歯科医師がチェアサイドで使用できる唯一の機器として、世界中で愛用されています。
 CERECシステムは歯の治療において、天然歯に限りなく近い審美的な色調・質感を持つ新セラミックブロックを使用し、高精度3Dコンピュータにより、チェアサイドで設計・加工を行う、先進のセラミック審美治療です。

 



CERECシステムの歴史
 1980年初頭、スイス・チューリッヒ大学において、従来の修復の代わりとなるCAD/CAMによるセラミック修復物の製作法が考案された(メルマン教授ら)。1985年に世界で始めての臨床応用がなされ、その後絶え間ない技術的革新を続け、現在に至っています。
 日本国内では1992年より市販され、これまでCEREC1・CEREC2・CEREC3と3代目まで改良がなされています。 特に、CEREC3では3Dソフトウェアや周辺機器の進歩により、診療所と歯科技工所の作業を格段に向上させ、より精度の高い修復物の製作を可能とした。 また、CERECシステムの進化と共に、セラミックマテリアルの開発も進み、CERECシステムによる臨床領域の拡大が図られています。

 

CERECシステムのコンセプト
 CERECシステムが考案された1980年当時は、今ではおなじみのコンポジットレジンが臨床応用され始めた時代でした。当時のコンポジットレジンは寸法変化(重合収縮)が原因で、二次う蝕(虫歯)・歯髄刺激(神経)・修復物のハセツや脱離といった様々な問題があり、また、磨耗に対する抵抗性の低さも懸念されていました。
 そのような中、メルマン教授は自身の基礎研究から、セラミックの修復物を少量のレジンセメントで接着させることにより、レジンの寸法変化(重合収縮)を最小限にし、先に述べた諸問題を解決しようと考えました。
 現在、コンポジットレジンの飛躍的な改善がみられ、直接修復という概念も確立されつつありますが、CERECの適合精度の向上と、レジンセメントによる接着の進歩により、メルマン教授らのコンセプトが、より信頼性の高いものであると考えられています。
 私見ですが、現在の接着技術の革新なくして、CERECシステムの信頼は無かったかもしれない。それ程、接着技術はすばらしいものだと思います。(日本が世界に誇る技術です)。


CERECシステムの適応
 CEREC3では、単独歯(1本)修復のほぼ全てのタイプに適応できます。
インレー、アンレー、クラウン、ラミネートベニア、仮歯、インプラント上部構造(特別なセラミックマテリアルを使用します) 特別なソフトが必要ですが、3本ブリッジも製作可能です(国内未販売のハイブリッドレジンのみ)。

 


CEREC3による即日修復(one day treatment) 
 従来の金属やセラミックによる修復物の製作では、歯科技工操作が必要であり、修復処置を完了するためには2回以上の診療回数を要していた。CEREC3では、即日修復が可能なため、様々な利点を要しています。
  @仮歯や仮充填が不要である。
    仮歯や仮充填がはがれたり、取れたりした場合、歯を削った面(象牙質面)が汚染され、歯髄(神経)に悪影響を及ぼしたり、接着力を弱めたりする事があります。即日修復はこのようなリスクが無いため、大きな意義があると考えられています。
  A麻酔の回数を削減できる。
    当然ではありますが、即日修復では麻酔が1回ですみます。
  B通院回数が削減できる。
  Cその他(同じく即日修復であるコンポジットレジン充填と比較して)
・口腔内作業の時間が短く、テクニカルエラーが起きにくい
・ 歯の形や色の選択の際、歯科医師の技量に左右されにくい。

 

CEREC3による間接修復(2回法)
 前述の通り、CERECは即日修復ができるという事が利点ではありますが、全てが即日
 修復で良いわけではありません。
 @1回の治療時間に制約がある場合
  ACERECのカメラが入らない位置にある歯
   B複雑なかみ合わせの回復
   C多数歯にわたる同時修復
   D前歯の追加的な色調調整を行う場合
 以上のようなケースでは、通常通り歯型を採取し、模型上で歯を製作したほうが効率的で、より精密な作業を行う事ができます。

 


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他の修復法と比較したCEREC修復の生存率
 2004年に発表された文献(Manhart)では、各種修復法の10年生存率を比較すると、
 CERECインレーによる修復やコンポジットインレーなどの間接修復の生存率が高い事
 が分かります。

         
図を入れる

 


CERECインレー修復の生存率
 CEREC修復における生存率評価については、最長18年(Reiss)に及ぶ報告をはじめとするいくつかの研究がなされています。
 厳密に言うと、生存率とは“そこに修復物が残っていれば良い”というものであり、これだけで優劣をつけるわけにはいきません。例えば、修復物の一部が欠けていたり、横に虫歯ができていたり、見た目が変であっても、生存は生存なのです。これって何かおかしい気がしますが、それを差し引いて考えたとしても、CERECは予知性の高い修復方法だと思われます。なぜなら、以下の研究結果は全てCEREC1・CEREC2の研究であり、
 格段に性能が良くなったCEREC3での修復や、今現在の接着技術の応用により、明らかに生存率が増すと予想できるからです。

      
表を入れる 



CEREC修復による適合精度について
 CERECシステムのコンセプトの項でも述べましたが、接着性レジンセメントを薄くできれば、寸法変化(重合収縮)による誤差が減り、良好な結果が得られると考えられています。つまり、CERECによる修復物の適合が良い事が重要だということです。
 CEREC1・CEREC2では、適合精度にこだわりを持つ多くの日本の歯科医師に受け入れられず、CERECをはじめ歯科用CAD/CAMをけぎらいする先生方が増えたと聞いております。それが後を引き、CEREC3も適合が悪いと決めてかかっている先生方も多いようです。しかし、CEREC3の適合精度は必要最低限の基準をはるかに超え、臨床的には何ら問題の無いレベルに到達しております。
  具体的には
@ CCDカメラのタイプ・解像度・画素数の向上による再現精度の向上
A 切削を水圧からモーターに変更した事による安定性の向上
B OSを最新のWindowsにしたことによるデータ集積の安定
C 設計用ソフトウェアの3D化とマージン自動検出機能による設計エラーの減少
D 最新の設計用ソフトによる再現性の向上
E ミリングインスツルメント(切削器具)の変更
 により、適合精度が格段に向上しています。

では、歯科技工士さんが作製するものとどちらが適合精度が高いのでしょう?
 もちろん技工士さんの腕にもよりますが、オールセラミックを専門とする技工士さん
 (セラミスト)が作ったものは、適合・形態・色調等の全体的なバランスを考えるため、
 CEREC3もかなわないでしょう。また、メタルボンドと呼ばれる金属焼付セラミック
 の達人には、適合面ではかなわないでしょう。しかし、その差はたいした問題ではないかもしれません。
 アメリカの補綴学会での適合性の許容は100μm以下(接着性レジンセメント使用で)といわれていますが、
CERECの適合精度はどれくらいかというと、

          インレー平均      クラウン平均
CEREC1     250±100μm
CEREC2     60〜80μm      160〜180μm
CEREC3     50
70μm      100μm以下
CEREC3D    40μm         80μm
 
 となっており、現在ではほぼ金属製の修復物と遜色なくなってきています。
 
     


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CERECに使用するセラミック材料について
 CERECシステムでは、セラミックからできたブロックを切削する事で、歯を作製していきますが、このセラミックブロックについても、近年様々な改良が加えられており、患者さんや歯科医師に多くの恩恵をもたらしています。
  <セラミックブロックの種類>
   ・長石系セラミック
   ・リュウサイト系セラミック
・リチウム系セラミック
   ・ジルコニアセラミック(酸化セラミック)
   ・その他
 詳しい内容は避けますが、同じセラミックでもその組成により様々な特徴を持っています。これらを上手く使い分けることにより、より審美的な歯ができたり、インプラントやブリッジへの応用もできるようになります。
 最近では、ブロック自体の色を3層構造にすることで、より天然歯に近い色調・質感を持った修復物を作製する事が可能になりました。

                                     

 

セラミック修復の利点とCEREC用セラミックの利点
 従来のセラミック修復における様々な利点のみならず、CERECで使用するセラミックブロックは、固有の特徴(長所)も持ち合わせています。
 《セラミックの一般的利点》
@ 天然歯に近い色調を有し、審美性に優れています。
A レジン(白いプラスチック材料)と比べ、着色や変色、磨耗の心配がありません。
B プラークや細菌が付着しにくいため、健康的な歯肉を維持しやすいのも長所です。
C 生体親和性(副作用が無く生体になじむ性質)に優れ、金属アレルギーなどの心配が無いため、安心・安全で体に優しい素材です。
《セラミックブロックの利点》
@ 様々な歯の色に対応し、他の歯の色によく馴染むセラミックブロックは、審美性に大変優れています。(従来どおりの技工による加工も可能)
A 咬み心地や舌触りなどの質感も天然歯に近い自然な感触です。
B 従来のセラミックと比較して歯のエナメル質(表面)により近い性質を示しており、対合歯(治療した歯と上下反対の歯)を傷めないという特徴があります。
C CERECで使用するセラミックは工場で規格生産していますので、気泡などが混入することもなく、全世界共通で常に品質が安定しています。

 


CEREC修復における接着
 CERECシステムのコンセプトの項でも述べましたが、CEREC修復には接着が必要不可欠となります。コンポジットレジン充填の際におきる寸法変化(重合収縮)に比べ、セラミック修復は、レジンの量を少なくできるため、重合収縮の影響が少なく、接着率の向上につながるという利点があります。
 この利点を最大限に生かすために重要なことには以下のような点があります

@レジンの量を減らすには、CEREC修復物のより高い適合性を目指すこと
A接着の手順を守り、慎重かつ正確に行うこと
B歯の接着面を清潔に保ち、防湿をしっかりと行うこと(できればラバーダム)
C接着材をしっかりと固めること

    
接着の手順・ラバーの写真

 


「患者さんへのお願い」
  CEREC修復を行うにあたり、最後の歯のセット(接着)は最も重要な場面の一つです。歯を削り、CCDカメラ撮影を行い、歯を作製し、仕上げ磨きを行い、いよいよ歯を入れるという段階で、絶対にミスは許されません。通常の金属修復では、5分位で歯がセットされると思いますが、接着の場合、最低でも10~15分は必要です。その後の調整を合わせると、デンタルチェアから降りられるまで30分位かかるでしょう。長いとは思いますが、どうぞご理解下さい。


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CERECシステムにおける光学印象採得(カメラ撮影)
 CERECシステムの口腔内カメラは、縞模様LED光を歯に投影し、その縞模様の変化を
 CCDセンサが読み取る、そしてコンピュータが解析し、削った歯の形を立体画像として
 再現するという仕組みになっています。この撮影の際、歯のエナメル質がLED光を吸収
 してしまうため、二酸化チタンのパウダーを歯に噴霧しなければなりません。また、パ
 ウダーを歯につけておくための接着剤の塗布も必要となります。
       
光学印象の利点
@ 従来の印象採得(歯型とり)と石膏模型の作製が不要。
A 従来の印象採得(歯型とり)に対して嘔吐反射を有する患者さんに適用可能である。
B 従来の型とりや模型作製に使用する材料による寸法変化が無い。
C 従来の型とりよりも短時間である。
光学印象の欠点
@ お口の開口度が小さい患者さんでは、カメラが入らない事がある。
A パウダー操作やカメラ撮影には、経験が必要である。(熟練度が精度に影響)

 



解説・写真:落合宏頼

 


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